【不食】30日間の絶食……俳優・榎木孝明さんの挑戦

2019年4月15日

食べることをやめてみました

2015年、俳優の榎木孝明さんが30日間の"不食"を行った、とメディアを賑わせます。

不食とは、食事を食べなくても生きていける、食べないほうが元気に生活できるという考え方をもとに、1日1食未満・微食・もしくは完全な絶食状態を継続するライフスタイルのこと。

食事を抜いたほうが体調がいいと感じる、3食食べなければならないという考え方に違和感を感じる、そんな人もいるかもしれませんが、人は食べなくても生きていけるなんてことは可能なのでしょうか?

食べないで生きていく――そんな常識破りなメッセージを発信した榎木さん、今回は彼の著書『30日間、食べることをやめてみました。「不食」という名の旅』(マキノ出版)からリアルな不食体験をご紹介します!

※この記事では"不食"を肯定的に取り扱っています。実践される場合は、少しずつ食事を減らしていくこと、決して無理をしないこと、可能であれば専門家の指導を仰ぐことをおすすめします。また、あくまで個人の責任において安全に十分配慮して実践してください。

榎木孝明って?
1956年生まれの俳優。探偵「浅見光彦」シリーズで主演を演じるほか、テレビドラマ、映画、リポーターなどの仕事をこなす。一方で古武術を指導したり、絵画をたしなんだりと幅広い活動で知られる。

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絶食に慣れている榎木さん

榎木孝明

≪出典:http://www.officetaka.co.jp/

20代のころから行動力のあった榎木さん。

「そうだ、ヒマラヤに行こう。」そんな思い付きで旅することも多く、寝るも食べるも現地調達するような奔放なスタイルで旅をしていたんだとか。

何も食べずに山の中を何日も歩き回ったり、食べないことに慣れていたようです。これがきっかけで食べないことで体調が良くなるのを経験し、のちの不食につながっていきます。

精神世界にも関心がある

彼は若いころから精神世界に関心がありました。精神世界コーナーが本屋になかった時代、古書店をめぐって精神世界関係の本を見つけることを楽しみにしていたんだとか。

夜に金縛りにあったり、自分のうえを通り過ぎる甲冑を着た落ち武者を見たり、幽体離脱してみたりスピな体験も豊富。また「気」やインド思想における「プラーナ」という概念も受け入れ、不食中は宇宙のエネルギーを空気中から取り込んでいるのでは?といった考察も行っています。

不食に惹かれ始める

役作りの減量中、食べないと調子がいいことに気づいた榎木さん。

おりしも、2004年に不食という言葉を提唱した山田鷹夫さんの影響も受けていて、「もっと食べなければどうなるのだろう?」という好奇心に駆られていきました。

不食は意識の覚醒を促し、頭をクリアにしてくれる。今までよりずっと自由になり、もっと多くの可能性を生きられるようになるのではないか。そのような思いを次第に募らせていきました。そして、2015年、30日間の不食生活を宣言することに。

公開してやるなら、世間的なインパクトがあるほうがいいだろうということで、30日の不食チャレンジを決めたそうです。

誤解されたり、批判されたりするのも、覚悟のうえ、了解のうえ。わかる人にはわかるし、理解できない人には理解できないだろう、それでよいと割り切ることにしました。

同書p.23

せっかくやると決めたのなら徹底的にやろう――有言実行を信条とする榎木さんは、決意して心臓外科医・南淵明宏氏に相談しに行くのです。

医師のフォロー、24時間の監視

医師の南淵氏に依頼したのは都内の病院の一室を借りて寝泊まりする許可を得るためでした。

医師の指導の下、安全に不食を行うだけでなく、公正を期して室内には定点カメラを設置して24時間の監視体制。日常もカメラで追わせるなどの徹底ぶり。(DVDにその内容が収録されています)

食事に関しては一切食べないルールとするのは当然ですが、飲み物に関してはお茶・コーヒー・水を飲んでいたようで、1.5リットルか、日によってはもっと少ない日もあったようです。医師から勧めれられたビタミン剤は1度飲んで体調が悪くなったため飲まなかったとのこと。

では実際に榎木さんの不食生活はどのようなものだったのでしょうか?

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榎木さんの不食実践記録!

不食

この本には榎木さんの食事記録が日記形式で30日分すべて書かれてあります。

彼の体重・体調・意識の変化などの推移をざっくり見ていきましょう。

最初の10日は気分が悪くなることも

まずは体重80.5kgでおなかぶよぶよの状態でスタート。ダイエットが目的ではないので運動はしなくてよいのですが、仕事の関係か、訪問先を歩き回ったり、武術のけいこをしてかなりアクティブに動いている榎木さん。空腹は全然ないそうですが、おそらく体が慣れているのでしょう。

基本的には快活なのですが、疲れから気分が悪くなることもあり、翌日7日目には全身のけだるさから医師に勧めで角砂糖入りコーヒーを飲んでいます。彼の場合、通常なら絶食状態で4日目に宿便が出るそうですが、今回は8日目に出たとのこと。

不食9日目はまた少し体調が悪くなり、10日目には体重が75㎏に。このとき、ブトウ糖と塩アメをなめています。

次の10日は快活に過ごす

この間も取材やテレビの生出演などをどんどんこなしていきます。

不食13日目以降は三陸のロケに出かけ、一日中歩き回っても疲れなし。元気を取り戻しているようです。このとき、腹式呼吸している状態に気づきます。15日目にしても体重はまだ74kgを維持していて、脇腹のぜい肉が落ちていないという記録が。

16日目あたりから体調が改善し始め、頭がクリアになり、左ひざの慢性的な痛み、長年の腰痛も改善に向かい始めます。不食19日目は体重73kg。朝はけだるいものの、講演に散歩して杖(じょう)を振るなどのアクティブな活動をしても、むしろかえって元気になることを不思議がる榎木さん。

温存していたエネルギーではなく、動くことで新たなエネルギーを同時に作り出しているために、疲れ度合いが低いのではないだろうか。

同書p.64

最後の10日も体調良し

22日目は体重約72kg。古武術のけいこ日で興味のある人に教えているんだとか。余計な力が抜けた分だけ、体の動きが軽く、スピーディーになったようだと言います。30日間で最終的に体重は70kgほどまで減ったようで、無事不食期間が終了。

復帰食はちょっとリスキー

断食・絶食・不食など、食事を長期間食べていないと、復帰食は重湯などから始めるのは常識ですね。でも榎木さんは一発目からカメラの前でイタリアンでエビを食べたりしていましたが、これには専門家たちからも批判の声が。

たしかに重湯を啜っている姿よりはインパクトのある映像ですが、安全のために復帰食は丁寧にやるべきでしたね。

彼は3日間、それから徐々に食事内容を戻していくのですが、4日目にヒレカツ弁当を1人前食べたところ、猛烈な腹痛になってしまいます。病院にこそいかなかったものの、3日の復帰食では30日間の不食を埋め合わせることはできないということがわかりますね。

時間をかけて、ゆっくり復職するべきなのでしょう。とはいえ、榎木さんは無事不食を成功させました。これからも不食を行うかどうかはそのときの判断でやっていく、という彼らしい方針を残しています。

不食という行為は危険ではないのか?

危険な食事

これについては、心臓外科医で、本書を監修した南淵明宏氏が言葉を寄せています(p.130以降)。榎木さんからの依頼を受けた時に快諾したそうです

なぜなら、個人差はあるものの水さえ飲んでいれば人間は食べなくても30日くらいなら生きられるからだそうであり、かつそれは多くの医師が賛同してくれることであるとのこと。

体には異化(catabolism)という現象が存在し、エネルギー不足になったら、体内にある筋肉や脂肪を使ってそれを補うことができます。唾液を含む体液でさえ、1日に11ℓ分泌されていて、それが再吸収されて利用されるなら、賄うことが可能であるとわかります。

飽食の時代にあり、1日3食食べなければならないという固定観念に囚われた現代人に対して榎木さんが行ったのは「現在共有されている知識を疑い、新しい覚醒を促そうとする行為」(p.110)であり、常識に対する挑戦でした。

私たちは常識にしがみつき、食べなければならないと自分たちに強制し続け、それが当たり前だと思い込みます。そして常識から外れた者をときに糾弾します。

そのような"常識的な"私たちが彼の挑戦から学ぶべきなのは、「不食というライフスタイルはアリなんだ」という一点の変化だけではなく、「常識からもっと自由になろうぜ」というメッセージのほうなのかもしれません

空腹がつらいという意識こそ、食べないと生きていけないという常識がもたらすものです。

p.22

不食という生き方はアリ(まとめ)

私は子どものころ太っていたこともあり、ダイエットをしたり、断食したり、食事制限することに慣れています。断食道場で3日間断食したこともありますね。その中で食事を減らすことで体質が改善したり、体調が良くなるのを何度も経験してきました。

一日をいい気分で過ごしたい、最高のハッピーな一日を過ごしたいと考えるのなら、体からのアプローチはすごく重要。瞑想・ヨガ・適度な運動・食事制限といったことは本当に精神的快活さに良い影響をもたらしてくれます。

肉体的な欲求に振り回されている不自由な状態より、あらゆる欲望が断たれた状態が心地よく本当に素晴らしい気分で生活ができる――それを追い求めるから不食を受け入れられるのでしょう。

不食というものがもっと広く深く浸透し、健康ブームの中心のほうへシフトしていき、ライフスタイルとしてもっと認められれば素敵ですね。

注意!

不食は魅力的なライフスタイルの1つ。ですが積極的に推奨するものでもありません。自分の関心に従って実施する場合は、決して無理をせず、食事を少しずつ減らすところから始めましょう。(※空腹を感じているのに努力して食べないようにするのは不食とは呼びません。)

十分すぎるぐらいの準備をして安全に最大限配慮して始めること、他者に決して強要しないことも重要なこと。その上での空腹を愛し、空腹やけだるさに伴う心地よいさを感じ、不食によるメリットを最大限享受できる方だけが続けていけばよいのではないかと思います。

参考文献・URL

榎木孝明(2015)30日間、食べることをやめてみました。「不食」という名の旅 南淵明宏監修 マキノ出版

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