【催眠】まだ怪しいと思ってる?科学された催眠を知ろう

催眠する少女

「催眠」といえば、まず何を思い浮かべますか?

怪しげな催眠ショー?スピリチュアルな催眠?洗脳?……そういったものもありますが、一方で科学で取り扱われて臨床的に応用されている"まじめな催眠“というものがきちんとあるんです。

今回の記事では「とりあえず、ちゃんとした催眠を知っておこうぜ」というテーマのもと、科学的な催眠についてお話していきます。なお内容については、斎藤稔正(2009)『催眠法の実際』(創元社)の書籍のみを参照しています。

著者・斎藤稔正氏の略歴
1940年生まれ、京都大学・大学院卒。教育学博士。専攻は異常心理学・人格心理学。ミュンヘン大学客員教授、立命館大学教授、日本催眠医学心理学会理事長などを歴任。

ココブロで'催眠'を取り扱う理由
当ブログは引き寄せの法則やニューソートをメインコンテンツとして取り扱っています。ニューソートは米国の催眠術師フィニアス・クインビーによるもので、彼は催眠を通して人の信念を変えれば病気を治せるという思想にたどり着きました。

催眠とこれらの思想は深いかかわりがあります。 でも。今回紹介するのは『科学的な催眠』です。ニューソートや引き寄せの法則は自己啓発やスピリチュアルに分類されるものであり、科学とは異なります(科学を援用する意図はありません)。

この記事ではあくまで関連トピックとして「正しい催眠(の基準)というものを知っておこう」というものですので、よろしくお願いします。

では、本題には入っていきましょう!

スポンサーリンク

催眠って科学なの?疑似科学でしょ?

科学者

そもそも催眠は科学なの?…そう言われると催眠=科学(イコール)ではないと言わなければならないでしょう。

なぜか?それは、娯楽や疑似科学の"催眠"が入り込む余地がありすぎ、不純物があまりにも多すぎるからです。しかし一方で、科学的に研究されてきた催眠というものもたしかに存在しています。

斎藤氏によれば、近代から現代まで心理学や生理学に携わる著名な学者を含め、多くの研究者が催眠に関心を注いできのだと言います。

意識が変容した状態とか、無意識のメカニズム、暗示の効果などの基礎的な面から催眠を研究している心理学者や生理学者がいる。また、不安や恐怖の除去、痛みのコントロール、リラックス、暗示による自己制御、創造性の開発など、臨床的、応用的側面からの催眠の利用を考えている…(中略)…人たちも少なくない。

『催眠法の実際』 p.3

心理学の歴史が浅いように、催眠の歴史もごく浅いものです。変性意識状態という点だけで考察するなら古代までさかのぼれそうですが、実際には18世紀のとあるオーストリア医師がその源流。歴史と言ってもほんの300年ほど前。歴史をちょっとだけ紐解いてみましょう。

医師・メスメル。催眠術で大ブレイク

18世紀のオーストリア・ウィーンで開業医をやっていたフランツ・アントン・メスメルさん。英語のmesmerize(メスメライズ:催眠術にかける)の語源にもなっている彼が今日(こんにち)の催眠のルーツとされています。

メスメルは「自分の体から発する特異な生命エネルギーによって催眠現象が生じると考え、動物磁気と呼んだ(p.7)」そうです。つまり、宇宙の遊星から放出される磁力の影響をメスメルの体が受け止め、それを指先などから放射して催眠現象を起こすと考えていたようです。なかなか電波な思想ですね。

そんなゆんゆんしていたメスメルさん。しかし、彼のふしぎな施術によって多くの患者たちが苦しみを治癒していったのは事実。ウィーン正統派の医学界は動物磁気説を容認しなかったようですが、彼の治療法はメスメリズムと呼ばれ世間や社交界から人気と注目を集めていきました。

フロイトも魅了され、そして心理学へ…

その後メスメリズムは鳴りを潜めるのですが、1世紀くらいしてからパリの解剖学者・シャルコーがこれをヒステリーの一種だと主張し、暗示説を唱えるナンシー学派のリエボーやベルネイムらと対立し催眠の論争が勃発します。(現在では暗示説が正しいと実証されているようです)

このときシャルコーに学んだジクムント・フロイトは、催眠法を発展させ自由連想法を完成し、さらにこれが現在の臨床心理学・行動療法などへと発展していきます。

催眠の研究を続けた心理学者にはジャネ、プリンスなどがいて、強い関心を示した人の中にはホール、パブロフ、ジェームズなど有名人もたくさんいました。催眠は心理学の発展にものすごい大きな影響を与えたというわけです。

さらに近年、ハル、ヒルガード、エリクソンなども催眠研究に貢献し、多くのメカニズムが解明されてきたとされています。

スポンサーリンク

催眠の特徴とは?

眠る猫

ところで催眠状態というのは具体的にどのようなものなのでしょうか?ヒルガードによって挙げられた8特徴を列挙しつつ、ごく簡単に内容を説明してみます。

  1. 意志的行動に対する要求の欠如
    暗示されたことに抵抗しようと思えばできたが、面倒なのでしないという意識状態。
  2. 選択的な注意集中
    催眠者の言葉にのみ注意を向けさせること。
  3. 過去経験をイメージの世界で再生
    変性意識状態ではイメージが活性化され、想像・想起させるのが容易になる。
  4. 現実吟味力の低下と歪曲された現実への耐性
    現実を理性的に判断する能力が低下し、「人が透明に見える」「耳が聞こえなくなる」という非現実的な暗示も受け入れられるようになる。
  5. 被暗示性の亢進
    暗示にかかりやすくなる。
  6. 催眠的役割行動
    催眠上で「あなたは鳥になる」という役割を与えられたら、それになり切ることができる。
  7. 健忘
    催眠中のことを忘れてしまう自然健忘があるほか、後催眠暗示を与えて内容を部分的に忘れさせることもできる。
  8. 身体的リラックス
    リラックスによって心地よい気分になってその状態にとどまりたくなるため、現実からの離脱を図り現実吟味力を低下させるため。

ざっくり以上のようになります。眠くてふわふわして気持ちよくてぼんやりしている状態が催眠状態で、これが深まるほどに現実を吟味する力が弱くなったり、能動的な意欲が無くなっていきます。

アルコールに酔ったり、恋愛中であると似たような精神状態になるため、催眠状態とはそれほど非日常的なものでもないことがわかります。

催眠に個人差ってあるの?

催眠 個人差

催眠に関する個人差もこれまでに研究が進んできたようです。俗説ではバ〇はかかりやすい的なことを聞いたことがありますが、それは本当でしょうか?ざばっと見ていきましょう。

  • 性格が単純な人ほど催眠されやすい?
    これは事実ではありません。質問紙法・投影法・評定法など各種心理検査で調査が行われましたが、性格と催眠感受性(かかりやすさ)との間に一定の傾向はみられないそうです。
  • 知能が低いと催眠されやすい?
    これも事実ではありません。知能と催眠感受性に有意な相関はないと言われています。
  • 年齢が低いほうが催眠されやすい?
    これは正解です。最も催眠感受性が高いのが8歳前後だとされています。また高齢者の場合は、暗示を素直に受容しない、注意集中が低い、イメージ能力が低いなどの傾向があるようで、催眠が失敗する可能性もあるようです。
  • 女性のほうが催眠されやすい?
    これは事実ではありません。男性と女性に催眠されやすさに違いが無いとされています。催眠者の性別と、被験者の性別を掛け合わせて4つの組み合わせを厳密に検討した研究でも性差は否定されているようです。とにかく男女差はないということですね。
  • 催眠への態度は催眠されやすさと関係ある?
    これはあるようです。偏見や否定的・消極的態度だと催眠されにくくなってしまいます。だからこそ催眠者は一生懸命信頼関係を築き、そういった誤解や不安を払しょくしていきます。
  • 熱中性(夢中になって何かに取り組む性質)は関係ある?
    あるみたいです。周囲のものごとを忘れて一つの事柄に熱中する性質を持つ人は、催眠感受性が高いそうです。細かいところは意見が分かれているようですが、誰かと競い合うような種類の熱中ではなくて、音楽・自然・読書・芸術・創作に熱中するようなタイプの人が催眠にかかりやすいとのことです。

こうやって見ていくと、催眠というのは性格・知能・性別というわかりやすい個人差は無いことがわかります。一方で、精神的に柔軟であり物事に熱中するような性質を持っている人ならその恩恵を受けられるので、催眠感受性(かかりやすさ)とはある種の資質や才能のようなものかもしれませんね。

催眠のやり方

催眠

催眠のやり方には興味が尽きませんよね。ただ、この記事では催眠の概要を知るのが目的ですので、あくまで軽く流れに触れるだけにしておきます(ちゃんと知りたい方は本書をご覧ください、注意事項がいっぱいあります)。

なお、ここでは書籍の表記に従って、催眠する人を催眠者、催眠される人を被験者と呼ぶことにします。

事前準備:信頼関係を築き、動機づける

斎藤氏いわく、「他者催眠とは自己催眠」(p.112)であり、被験者との信頼関係を気づき、不安を除去し、積極的に取り組みたいという気持ちに導くのが重要な仕事だそうで、これを事前にやり終えるなら、催眠における半分以上の仕事は終わったことになるそうです。

1. 導入:集中させる

まずは1点に注意集中させていきます。たとえば、体の各部位の感覚的な変化を体験しつつ「けだるい心地よさが体に少しずつ広がっていく」などの暗示を与えていきます。そうすると、被験者は次第にリラックスして現実志向性が下がっていきます。

2. 誘導:トランスへ

ここからさらに被験者をトランス状態(特殊な精神状態)に導いていきます。外側からトランス状態かどうかを見極めるのは難しく、催眠者の勘に頼る部分も多いようですが、リラックスが進行すると被験者が目を閉じ始めます。これは絶対ではありませんが、トランス状態の1つの指標になるそうです。

被験者は注意集中による疲労、リラックスの誘導により、次第に眠気を感じ始めます。一方で催眠者の声が聞こえている状態なので完全な睡眠にはなりません。これでトランス状態に到達します。

3. 深化段階:もっとトランスへ

臨床的に必要とされる人格暗示・幻覚暗示・記憶の促進や抑制といった複雑な暗示を実現するにはトランスをもっと深化させる必要があります。トランス生起手続きを繰り返し、暗示内容を強化することで被暗示性が亢進していき、反応量の増大と反応速度の増加などが起こり、より困難な暗示を実現できるようになります。

4. 催眠段階:本番

催眠が可能な段階(催眠トランス)に到達すると、あとは当初計画していた実験や治療を行っていくだけ。ただし深化段階と合わせて重要なのは、トランスが深化しすぎると被験者は暗示を煩わしく感じ、反応しない、眠りに逃避するなどの受動的になりすぎることもあります。催眠者はトランスを深めるだけでなく、浅くするなどして能動性を取り戻させる工夫も必要になります。

5. 解催眠段階:催眠を解く

催眠状態を解く段階。この段階は決してたやすくなく、催眠中の暗示の影響に対する配慮を行い、催眠中に与えた暗示を消去し、覚醒時に日常上に支障をきたさないように被験者に配慮がされなければなりません。

また、催眠者と被験者は、催眠のための信頼関係を形成していますが、この心理的関係も通常の人間関係よりも色濃く錯綜しているものだからきちんと払拭してもとに戻らなければいけません。

催眠者は優越的な立場に立つため、その全能感をいつまでも感じたいという欲求を持ちがちですが、その欲求の統制は極めて重要。すなわち、催眠者自身のセルフコントロールが求められるということです。

6. 後催眠暗示:催眠の効果を残して目覚める

意図的に催眠の効果を残しておくための暗示です。アルコールを禁止する際に「これからいつでも、お酒を飲もうとする際に、むかむかした気分になり、無理に飲もうとすれば強い吐き気を感じるでしょう」といった種類のもの。

この後催眠暗示の詳しいメカニズムは明らかではないとしていますが、利用価値があるため目的に応じて正しく活用していきます。

催眠の応用

健康的な女性

催眠はどんな分野に対して応用することが可能なのでしょうか。本書掲載のうち、4つだけを取り上げてみたいと思います。

精神的健康

近年は長らく健康ブームが続いていますが、ヨガ、太極拳、ジョギング、瞑想法、座禅などその中身も多様です。常に緊張を求められる現代では自分の緊張をうまく解きほぐし、リラックスした状態を作り、病的な心理生理的体制を崩して(ストレスを解消して)、ふたたびバランスの取れた状態に戻れるようになります。催眠もまた、ストレスからの解法に貢献できます。

セルフコントロール

自分の意志の力で欲求を制御しがたい場合、無意識の面から働きかけるのが有効。酒やタバコやギャンブルなどがそれに当たります。また、肥満や不眠などの生活習慣に関わるものに対するコントロールも含まれます。

教育

子どもたちの学習への動機づけ、学習への注意集中、対人関係、乗り物酔い、偏食、夜尿、受験勉強や受験前のストレス対処など幅広いものに応用が可能です。教育に催眠を利用するなどもってのほかだと知識のない人たちは感情的になりがちなようですが、正しい知識を持ち、適切に扱うことで、教育現場に山積する課題を解決する一技法として催眠は有効であると斎藤氏は述べています。

医学的利用

強迫神経症、転換ヒステリー、神経症的抑うつ反応、人格解離性障害などの精神医学領域はもちろん、内科・皮膚科・歯科などの領域への応用も行われています。

こちらもどうぞ!

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は科学的な催眠について紹介してみました。歴史に名を残した数々の心理学者たちが関心を持ってきた催眠ですが、これだけしっかり研究されていればそれほど眉唾じゃないんだね、ということがわかります。

今回はあくまで概要をざっとまとめただけでしたが、詳しく知りたい方は斎藤稔正(2009)『催眠法の実際』(創元社)をご覧ください。

スポンサーリンク