【よくわかる】ニューソートって何?意味と内容を詳しく!【後編】
今回は、ニューソート後編記事!
ニューソートはポジティブ・シンキングの思想的源流であり、19世紀末のアメリカに始まり、スウェーデンボルグやクインビーといった人物をきっかけに生まれた一大潮流。現代人にとっては当たり前、でも理解しようとすると実は奥深い思想です。
前回は、歴史と中心人物をざっくり見ていきましたね。
後編記事では、ニューソートの思想的変化と、ニューソートの特徴に詳しく触れていくことにしましょう!
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ニューソートの思想的変化って?
ニューソートも時代を下るごとに提唱される内容が少しずつ変化していきます。3つに分けてみましょう。
キリスト教思想として出発
きっかけをつくったのはクインビーでした。個人の誤った信念や伝統的なキリスト教観の思い込みが原因となって、心身症となっている人々を治療していったのがニューソートのそもそもの始まり。
クインビーは伝統的なキリスト教や教会を徹底的に批判し、患者たちを癒すことにその生涯を捧げました。
そのスタンスはすべての病気はキリストの力によって治癒される、という宗教的な考え方によるもので、メスメルのように科学的理解を試みようとしたものでもなく、フロイトのように心理学をベースにしたものでもありませんでした。
やがて"ポジティブ・シンキング"へ
ポジティブ・シンキングという言葉は誰でも知っているかもしれませんね。
これは1952年にノーマン・V・ピールが提唱して広まったもの。成功や幸福を心から信じて願いを叶えていこうという提案であり、ニューソートの象徴的な言葉として知られています。
初期ニューソートでは、催眠術(メスメリズム)によって病気であるという信念を変えることで治癒を促してきました。クインビーは宗教的に、エヴァンズは心理的にアプローチしましたが、いずれにせよ病気からの治癒という観点は堅持されていました。
しかし、この思想が少しずつ繁栄・幸福・成功の実現までもが可能であると理解されるようになり、トライン、アレン、マーフィなどなど、数えきれない人たちが感化されて、思想をあらわしていきました。
宗教色は薄まって、ビジネス化へ
時代が下るにつれて、これまでの色合いは必ずしも保持されなくなります。たとえば当ブログでも紹介しているアトキンソン、ワトルズ、ハーネルなどは主に20世紀初頭に活躍しましたが、特別キリスト教的でもありません。
現象を根拠づけるための世界観が科学・心理学・潜在意識などに移りかわっていくと、必ずしも神やキリストの出番がなくなったからかもしれません。
やがて、コリアーやナポレオン・ヒルのようにビジネス書として愛されるものも出てきて、ビジネス界隈との親和性が高まり、成功哲学としての色合いを強めていきました。
以上のように、キリスト教(スピリチュアル)→心理学・科学→ビジネスという単純な流れでできているわけではありませんが、言っている内容の本質が同じでも、世界観や捉え方が移り変わっているんだ、という点は見逃せません。
1960~80年代にはニューエイジが流行したときにはエイブラハムの「引き寄せの法則」が生まれ、2000年代にスピリチュアルが流行したときにはロンダ・バーンの「引き寄せの法則」が提唱されましたが、新しい世界観の下で再解釈されて思想が生み出されている点には注目したいですね。
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ニューソートの特徴って?
自己を主体とし、心を中心にして世界を捉えていくより健全な人生を目指すニューソート。
どんな特徴があるのかを4つほど列挙してみましょう。
心の力によって願いを叶える
心にはあらゆる力が秘められています。想像することも、考えることも、気づくこと・思い出すことでさえ一個人を前に推し進め、人類全体の繁栄に大きな影響を与えてきました。
一方で暗い思いを抱き、苦しみや絶望に打ちひしがれているのであれば、現状の好転は難しく、さらに苦難の日々が続いていくかもしれません。そのような心の状態と自分の環境には対応があることにニューソート思想家たちは注目しそれを積極的に活用していきます。
ニューソートでは、やむを得ない事情・誰かの都合・社会や環境のせいにして成功と幸福をあきらめるようなことは決してありません。治癒も成功も幸福も自分でコントロールが可能であるという考え方を大切にし、そのために自己を深く見つめ自身で責任を取ることを勧めるのです。
神=宇宙の法則と認識
そもそも、神様は人と同じ姿なはずですが、これは神を「人格化」しているわけです。でも、ニューソートでは人格的な神を認めず、神とは宇宙の法則のような非人格的な存在あるいはエネルギーとして認識しています。
その神たる中枢原理は「大霊」「純粋霊」「無限の精神」「中心の太陽」など様々な名前で呼ばれるのですが、「呼び方は何でもいいよ!」という規格外の気前の良さを示すのがニューソート流。自由で堅苦しくない雰囲気こそ、多くの人の支持を得る魅力なのでしょうね。
個人主義で自由が好き
伝統的キリスト教に反発する要素を持っていた初期ニューソート。後に続く人たちも教会や教義に縛られるのを嫌がる傾向があったようです。多くの実践家や思想家は組織などをつくることなく、作家・講演家・教師という個人の立場で思想を広げていきました。
ニューソート研究家のラーチン・A・マーソンの言葉を借りるなら絶対自由主義とでも言うべきスタンス。なんかアメリカっぽい言葉ですよね。
でも、連盟とか宗教団体もつくられた
それでも大同小異を許容する最大公約数的な組織ニューソート連盟(INTA)がつくられると、多くの人々や団体が参加していきます。さらに、いくつかの宗教団体も実際に立ち上げられました。
たとえば、独自の活動で世界規模の超宗派的支持を得たユニティ派、教師・牧師の個人的な宗教観を寛容に認めるディバイン・チャーチ、そして権威主義的でニューソート的と呼びがたいクリスチャン・サイエンス……まあ、いろいろです。
ちなみにこの思想が企業に吸収されると、マルチ商法で知られるアムウェイや各種自己啓発セミナーなどになっていきます。それぞれあまりいいイメージがないかもしれませんが、いずれもたしかにニューソートが思想の核にあることは認めなければいけません。
まとめ
今回の前半・後半記事を通して、マーチン・A・ラーソン『ニューソート その系譜と現代的意義』を中心に、当ブログのコンテンツなどを交えながらご紹介していきました。
記事はずいぶん長くなってしまいましたが、ここまで読み進めてくださり、ありがとうございます。
複雑な話をかなりかみ砕いて解説したので、細部まで話をすることはできませんでしたが、ニューソートの流れが伝わっていればうれしいなと思います。
ニューソートや引き寄せの法則の中には心について見るべきものがたくさんあって、私たちの常識を心地よく押し広げてくれます。自分に必要な本や提唱者を見つけて、みなさんも人生の地平を切り開いていきましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。ニューソートについて詳しく知りたい方は、以下の本がオススメですよ。
参考文献・URL
マーチン・A・ラーソン(1987)『ニューソート その系譜と現代的意義』(高橋和夫ほか)日本教文社.
斎藤稔正(2009)『催眠法の実際』創元社.