【よくわかる】ニューソートって何?意味と内容を詳しく!【前編】
みなさんは、『ニューソート』という言葉を知っていますか?
成功と幸福のある人生を求める生き方や明るい考え方をポジティブ・シンキングと言いますが、この思想的な源流がニューソート運動と呼ばれる思想運動でした。
このニューソート、実はものすごく奥が深い思想。厳密に語ろうとすると、知らない人たちがぞろぞろ出てきて、不思議な言葉をたくさん口にするので、誰も理解できないかもしれません。
そこで今回の記事では、ニューソート(≒成功哲学・引き寄せ)に興味がある人なら誰でも理解できるようにざくざくにかみ砕いて説明することにしました。正確性に欠けるかもしれませんが、ポテチでも食べながら気軽に読むくらいのにはちょうどいいでしょう。
この前半記事では、言葉の意味・歴史的背景・キーパーソンの3つについてご紹介していきます。ぜひお付き合いください。
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ニューソートの意味とは?
ニューソート(運動)とは、誤った宗教的信念を変えれば病気は治る、という事実に基づいて催眠療法で米国中の患者たちを癒したクインビーという人物が発端になった思想的運動のこと。
19世紀半ばのアメリカでこの運動が広がった当時、キリスト教(プロテスタント)が抑圧的であり、宗教を原因とした心身症が数多く見られた時代でした。そういう人々を献身的に治療しながら、伝統宗教を批判したフィニアス・クインビーがきっかけをつくったのです。
新しい人生観の誕生と獲得
私たち一個人には「考え方」に違いがありますよね。
食べ物・衣服・音楽・文学・宗教・学問などあらゆるものへの支持・不支持、スタイルやコダワリがあります。
これは人生観でも同じこと。無難に目立たずそれなりの人生を歩みたい人、人生とは苦悩に満ちた地獄であると考える人、人生に成功や幸福を追い求める人……などなど。そしてニューソートとは「成功や幸福を追い求める人」に最も近しい思想だと言えます。
ここから自己啓発や成功哲学へと発展していき、「願えば叶う」という明るい思想が世に広まっていくことになります。
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ニューソートの歴史の背景
ニューソートはキリスト教に由来する治癒の思想として出発したわけですが、この思想の誕生にはざっと西洋の歴史を振り返る必要があります。
手短に2点、チェックしておきましょう。
西洋社会、激変する
18世紀末と言えば産業革命・フランス革命が起きるなど、社会が劇的な変化を遂げていた時代。啓蒙思想やら自由主義の真っ只中でした。
科学も飛躍的に発展し、19世紀ごろまでにはファラデー(物理学)・ダーウィン(生物学)・ノーベル(発明家)など、偉大な科学者たちがぞろぞろ登場。その発見や発明による実利性だけでなく、人々を魅了することで思想にも新しい息吹が加わっていきます。
キリスト教、変化を強いられる
やがてキリスト教(プロテスタント)にもリベラル(自由主義)の影響が及びはじめ、19世紀半ばには自由主義神学という立場が成立。社会変化や科学によって、「人間の理知とか自由って大事だよね」という流れに。
この自由主義神学というスタンスは、キリスト教を人間の精神活動や主体性に基づいて解釈したり、歴史的観点を導入したり、科学的に分析することも許容する立場。既存の権威的宗派はこのような考え方の変化と相対化されていく運命にありました。
社会が近代化されていく中で、ニューソートに絶大な影響を与えた人物が登場します。3名の中心人物を見ていくことにしましょう。
ニューソートの中心人物
神学者・スウェーデンボルグ
医師・メスメル
治療家・クインビー
聞いたことありますか?……歴史の教科書には登場しない(と思う)ので知らなくても仕方ありません。でも、彼らを抜きにしてニューソートを語ることはできないのです。簡単に見ていくことにしましょう。
新思想の源泉・スウェーデンボルグ
<画像出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/エマヌエル・スヴェーデンボリ>
エマニュエル・スウェーデンボルグ(1688-1772)は、ストックホルムに生まれた科学者・神学者。
諸学問に精通した天才
エマニュエルは、大学教授であり貴族であった父と、大手の鉱山業を営む両祖父を家系に持ち、多額の遺産を受け取り、そのお金を学問につぎ込んだハイソサエティな人でした。
彼は数学・物理学・天文学・経済学・化学・解剖学・生理学その他、広範な自然科学に精通し、補聴器を作り、暖熱ストーブを開発し、通貨の十進法を進め、脱穀機を考案し、地球の経度を測定し、血液循環に関する発見をし、銀河の性質をも説明したとか。控えめに言って天才ですね。
神秘的で異端の宗教観を持つ
神学者としての彼も異彩を放ちます。神とは唯一の非人格的存在であり、遍在してあらゆる対象に"流入"するものであるとし、これを許すことによって我々は活力・健康・道徳的善に満たされる、と説きます。人格的神を認めて三位一体を教義とする伝統的キリスト教観に著しく対立。
異端であるとして祖国スウェーデンで非難され、追放運動が行われ、その著作の普及が禁じられました。しかし諸分野においてのエマニュエルの業績があまりに大きかったため、"手に掛けられる"ことまではなかったようですね。
祖国に居づらくなった彼はオランダ・イギリスに向かって旅経ち、終生祖国の地を踏むことはありませんでした。
後世に与えた甚大な影響
エマニュエルが残した宗教観は西洋社会には著しいもの影響を与えました。ヘレン・ケラー、トーマス・カーライル、ウィリアム・ブレイク、マーク・トウェーン、ソロー、ゲーテ、バルザックなど、あらゆる知識人たちに深い宗教的・精神的なインパクトを与えたからです。
そして、クインビー、エヴァンズ、ホプキンス、エマーソンなど初期のニューソート実践家・思想家たちにもきわめて重大な影響を与えるため、ニューソートの思想的根幹・源流と呼んで差支えのないのがこのエマニュエル・スウェーデンボルグなのです。
さて、次はニューソートや心理学に催眠によってインパクトを残した“メスメル"がどんな人物かを見ていきましょう。
心を解放した医師・メスメル
<画像出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/フランツ・アントン・メスメル>
フランツ・アントン・メスメル(1734-1815)は、18世紀オーストリアの医者。
今でいう催眠術を駆使して多くの人々を治療し、当時のヨーロッパの人々から絶大な支持を得ます。でも、宇宙のエネルギーを指先から発するとか、"動物磁気"など不思議なことばかり言っていたため、医学界からは容認されていませんでした。
彼の催眠術(メスメリズム)はヨーロッパだけでなく、アメリカにも波及していくことに。
そして米国を訪れたあるメスメリストに感化されたフィニアス・クインビーという人物が、ついにニューソート運動を起こす火付け役として覚醒することになるのです。
新思想の火付け役・クインビー
<画像出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/フィニアス・クインビー>
フィニアス・クインビー(1802-1866)は元、米国の時計職人でした。
31歳の時、肺結核を患ったクインビーは退職を余儀なくされるほど体調が悪化。治癒のため「馬に乗るのが体によい」と聞いて、実際馬に乗ってみたところ症状が大きく改善。もしかして、自分の誤った信念が病気を引き起こしていたのでは、と考え始めるきっかけになります。
催眠で病気が治った!
しかし両肺に潰瘍があり、腎臓もやられているという医師の診断に囚われていたクインビーは、メスメリストの治療を受けることにしました。メスメリズムでは患者に催眠をかけるのではなく、術師が霊媒(催眠状態に入る人)に催眠をかけ、霊媒に病気を診断・処方させるやり方です。
霊媒はクインビーの腎臓などの病状を的確に言い当て「すぐに良くなるでしょう」と手を当てたところ、その翌日からクインビーの痛みが完全に消えてしまったと言います。この不思議に魅せられて、クインビーはメスメル派の治療家になることを決意したのでした。
多くを学び、多くを癒す
やがて彼はバークリーの哲学やスウェーデンボルグの著作に影響され、さらに共観福音書の治療技術を取り入れながら独自の思想を展開。彼の心的-宗教的治療法は、多分に神秘的な要素を含んでいたものの、己の信念によって病気をもたらしてしまった多くの人を救っていきます。
彼の治療家としての熱意は尋常ならざるものがあり、メイン州に常設の診療所を構えると数多くの患者を受け入れていきます。クインビーの自己申告ですが、この時期に1万人以上の人を治療したと述べているほどです。
さて、こうしてクインビーの影響は瞬く間に広がっていきます。ここで、代表的な思想家や提唱者について少しだけ触れてみましょう。
ニューソートな人たち
スウェーデンボルグに魅了され、クインビーに触発されたのがウォレン・フェルト・エヴァンズ。彼はニューソートの理論家であり、治療体系を学問分野としてまとめ上げた功績が認められています。
同じくクインビーに影響を受けたメリー・ベーカー・エディはクリスチャン・サイエンスという宗教組織を立ち上げました。さらにその存在が実践家のエマ・カーティス・ホプキンスを感化し、その経緯でノーナ・ブルックスらがディバイン・チャーチを結成します。
初期の提唱者で代表的なのはトライン、トロワード、ドレッサー、ホルムズなどの人々。やがて20世に入ってしばらくするとジョセフ・マーフィも登場しますが、彼は有名ですよね。ちなみに日本の宗教・生長の家で知られる谷口雅春もニューソートの系譜に数えられます。
後は、当ブログ(ココブロ)でも紹介しているアトキンソン、ハーネル、ネヴィル、あとはビジネス感の強いコリアー、ナポレオン・ヒル、シュラーとかいろいろいるのですが、細かいことは割愛します。興味のある方は当ブログの記事で詳しく紹介していますのでご覧ください。
前編記事はここまで(まとめ)
今回の記事では、ニューソートの概要と、歴史的背景、主要人物をそれぞれ解説していきました。
太陽のように熱く夢を語るのは現代人の気まぐれでも気の迷いでもなく、歴史的な、思想的な経緯があるというところに注目したいですね。
さらに後編ではニューソートが具体的にどういうモノか、そして時代とともに思想の移り変わりと多様性について話をしていきたいと思います。ぜひチェックしてくださいね!
面白い記事だったな……と思ったらシェアしてくださると嬉しいです^^
参考文献・URL
マーチン・A・ラーソン(1987)『ニューソート その系譜と現代的意義』(高橋和夫ほか)日本教文社.
斎藤稔正(2009)『催眠法の実際』創元社.
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